news

文化的価値を見極めて後世に

2023-07-26 12:25:22 guanli 6

近現代の名建築 文化的価値を見極めて後世に


 著名な建築家らが手がけた近現代の建物が、老朽化に伴って各地で解体されている。文化的な価値の高い建物については保存策を探り、後世に伝える必要がある。

 黒川紀章の代表作とされる東京・銀座のマンション「 中銀なかぎん カプセルタワービル」が昨年、取り壊された。日本発の建築運動「メタボリズム」の象徴とされ、海外から観光客も訪れていた。


 建物を残すには耐震工事が必要になるため、一部の住民らが保存運動を展開し、買い取ってくれる企業を探したが、契約に至らなかった。耐震化にかかる高額な費用が敬遠されたとみられている。


 1960~70年代の高度経済成長期に建設された鉄筋コンクリート造りの建物は、法定耐用年数を迎え、改修や解体の必要に迫られている。地域で愛され、文化的な価値の高い建物が次第に失われていくのは惜しまれる。


 民間の建物だけでなく、公共施設も保存は進んでいない。丹下健三が設計した「船の体育館」と呼ばれる旧香川県立体育館は今年、8年に及ぶ存廃論議の末に解体が決まった。改修費に見合う活用方法が見いだせなかったという。


 日本建築の国際的な評価は高い。魅力ある建物をいかに残すか。そのための費用をどうするのか。幅広く議論する必要がある。


 文化庁の有識者会議が今月、こうした課題に関する報告書を公表した。各地の名建築や個性的な住宅などをリストアップし、政府が顕彰することを提言している。


 築50年以上の歴史的な建物については現在、国宝や重要文化財に指定する制度がある。政府による顕彰という新制度は、築50年に満たない名建築などを将来の文化財候補として選定し、あらかじめ所有者に伝えておく仕組みだ。


 残す価値のある建物であることを、所有者のほか、自治体や地域住民にも知ってもらい、解体を防ぐ狙いがある。


 保存に向けては、国や自治体が所有者らと協議する場を設け、意向を丁寧に聞くことが大切だ。そのうえで、地域の名所として生かす計画を作るなど、効果的な活用法を探ってほしい。


 保存にかかる費用の捻出が難しい場合には、自治体や企業から支援を受けるほか、インターネット上で寄付を募るクラウドファンディングなども有効ではないか。


 資金が集まらないなどの事情でやむを得ず解体する場合でも、デジタル技術を生かして映像や画像を残す方法もあるだろう。

ニュース14.jpeg